【NINJAPAN×松下政経塾】

NINJAPAN以前の代表の活躍と、日本のアントレプレナーシップについて

NINJAPAN代表取締役CEO新井景介(以下、新井)と、学生時代からの友人である松下政経塾中田智博塾生(同、中田)による対談が実現しました。経営者と政経塾塾生という違った2人の観点から、就活ではなくアントレプレナーシップについて語り合っていただきました。

※松下政経塾:松下電器(現パナソニック)創業者の松下幸之助氏が創設した政治と経営のリーダーを育成する機関。これまでに首相をはじめとする数々の政治家・実業家・経営者・研究者などを輩出している。

中田)本日はありがとうございます。
新井さんとは、大学の近くの新井さんの家のパーティーで初めてお会いしたのが始まりでした。
当時、学生起業して数年目の新井さんは、私には「変わった人」に見えました。
そこで、新井さんの会社で働かせてもらうことになりました。

当時から新井さんの決断力や行動力、パワフルという印象が強かったです。
言葉を選ばずに言えば創業期の若いころの新井さんは「クレイジー」な人の印象でした。
今ほど学生起業家も多くない時代でしたが、なぜ起業をされたのでしょう?

新井)「世の中を変えたい!」という思いがありました。
あとは勢いですね。やるからには負けられない、という思いがありました。

中田)「世の中を変えたい!」というのはあまり普通の人は思わないと思います。
現状を変えたいというのはパワーが要ることではないでしょうか。

新井)根底には「何者かになりたい」というのがありましたね。
それは起業家であろうと、なんでもよかったんですね。
学生時代には政党とのイベントを行ったこともありますし、プロ野球選手を目指したこともあります。
エネルギーが有り余っていたいたときに、そのぶつける先に早稲田の起業家養成講座がありました。

中田)そうした新井さんと一緒に仕事をする中で、新井さんの作る組織には、「自由」だけど「過集中」な雰囲気があったと思います。
シリコンバレーや国内などの企業の創業期の手記など読んでいると、成功した企業の創業期にはそうした雰囲気があるように感じます。
そうした組織作りには意図はあったのでしょうか?

新井)結果的にそうした雰囲気の組織になっていきました。
常に何がいいんだろう、どういうのがいいんだろうということを考えています。
目的のために必要があれば、人がやらないようなめんどくさいことでもやりました。
その結果がおっしゃったような雰囲気の組織を作っていったのだと思います。

中田)そうした中で、起業して経営を行うとなると、決断をしなくてはいけない局面に多く至ると思います。
アントレプレナーシップを調べたある研究では、例えば発達障害者の特性である非計画的な決断が不確実な環境下での成功に直結するのだと言っています。
通常だと出来ない判断こそ起業の成功には必要なのかもしれませんね。

新井)そこは私の中では言語化できていて、基本的に、起業の決断はリスクリターンが合わないと思います。
通常の合理的な判断は起業においては間違いであるケースも多くて、リスク感覚がマヒしていないと決断を下せない事例も多いと感じます。
ある種、思考の中であらゆる選択を物怖じせずに押し通せることは強みかもしれません。

中田)失敗を恐れずに挑戦するということでしょうか。

新井)期待値は取れているので長期的に失敗ということは無いのではないかと思います。
ただ、リスクを過大視してしまうので多くの人はその選択肢にいきつかないのではないかなと。
例えばじゃんけんをして、買ったら1万円もらえるが、負ければ5千円を喪うとなったときに、絶対にやったほうが得なのに、一般的にはやらないこともある。期待値ではなくリスクを見てしまうんですね。

中田)事業を行っているとリスクが蓋然化すること、つまり失敗する局面もあると思います。
新井さんもこれまでかなり手痛い失敗をされてきたと伺っております。
そうしてときの対処はどうしていましたか?

新井)傷口を最低限に持ってくる努力はしましたね。
そのうえで、何回も試行錯誤を重ねました。
普通の人は一度失敗すると2年も3年も引きずってしまいますが、私は数か月で何度も再試行しました。
期待値を見続けて、試行回数を増やす。
それによってブレークスルーできたのかなと思います。

中田)今、新井さんは普通とおっしゃいましたが、日本の特性であり、世界では違うスタンダードな例もあります。
私は先日、イスラエルに行ってきたのですが、彼らは失敗について日本でとは逆の価値観を持っていました。
彼らの国には「失敗していない人間は、何もしていない人間である」という慣用句があるらしいんですね。
事業投資にしても、失敗した起業家に、失敗したからより経験を得ただろうとしてまた融資する。
そうした風土は日本と全然正反対だなと。
新井さんはアメリカにも留学されていましたが、日本の失敗に関する風土に何か感じることはありましたか?

新井)日本の風土はあまり関係ありませんでした。
自己破産しているわけでもないですし、学生からしたら取り返しのつかない失敗ですが、実業家としての大失敗とはならなかったので。
ただ、そうした失敗への不寛容さは一般論としては日本にあるとおもいますね。
ちなみにアメリカに行っていたからというのは全くなかったです。
向こうの友人はみんなサラリーマンですしね。

中田)新井さんは「異端児」のイメージが強いですが、ご自身の強み弱みを、経営者としてチームで価値を創造していく中でどうマネジメントされているのでしょう。 

 

新井)強みよりも弱みのほうが多い中で、みんながついてきてくれる、助けてもらえていることのほうが多いです。

 

中田)周りがそうなる理由はなんでしょうか。

同席したスタッフ)何かやってくれそう感があります。わかりやすく言うとワンピースのルフィーのような。ここできないだろうなという部分は明確にしてくれるし、頼ってくれる部分もついて行きやすい理由になっています。新井さんといると普段できない体験も多いですし。瞬発力だったり、キャッチアップの速さだったり、身内だけでなく対外的にも巻き込む魅力があるのかなと思います。

中田)バーリンという経営学者の記した「トラブルメーカー」という本には、シリコンバレーの異端児たちの軌跡が記されていますが、そこにはジョブズではなく彼らを支えたフォロワーたちの歴史が描かれています。スタートアップには歴史に記されないヒーローがいるということです。新井さんは以前インタビュー(https://www.wantedly.com/companies/ninjapan/post_articles/407516)で優秀でクレイジーなメンバーが集ってほしいとおっしゃっていますがその理由は何でしょうか。

新井)必ずしもクレイジーである必要はありませんが、何かしら尖っている人間は本来の能力を持て余していると思っていて、その才能は日本では活躍の場がまだまだ少ないと思います。日本の社会は従業員にきれいに成形された優秀なロボットを要求していて、尖った能力を生かせていない感じがします。

中田)そこに私は日本のボトルネックがあると思います。明治維新と戦後復興で重厚長大産業を急速に形成した製造業はベルトコンベヤーに適した人間、つまりラインの最低能力者に合わせた定型業務が得意な人間を求め、公教育や企業内教育はそうしたロボット的な人間の生産にフォーカスしすぎてきたと思います。同時に尖ったノイズ的な才能は居場所が少なかったと。

新井)そうした才能を持った人間をマネージできる人間も少なくて、そうした人をマネージする人がいれば彼らはエネルギー量もあるし、活躍するポテンシャルは十二分にあると思っています。

中田)日本と外国、特にアメリカの起業文化を比較して、日本にも起業文化を興そう、発展させようというトレンドが感じられるようになってきました。
スタートアップ経営者としてどう感じられますか?

新井)日本政府はいろんなことをしようとしていますけど、使いづらい、わかりづらいですね。

悪用しようとする人がいるからなのかわかりませんが、ガチガチに固めてから運用しようとしすぎていないかなと。
情報が本当に必要な人にリーチできていない。
なので、日本政府にはマーケティンをしてほしいと思っています。
有効に情報が必要な人に、イノベーションを促進する制度等が届くようにしてほしいですね。
今は、経産省のホームページに行くと経営者、若者、女性、e.t.c…どれに当てはまるのかわからないし、申請に半年かかったり。
ただ、一方で、そうしたことを関係なく挑戦するのが起業家なのでは、という気もします。

中田)岸田首相はこの2022年を「スタートアップ元年」として、スタートアップ大臣を任命したり、起業家数千人をシリコンバレーに送るとかしようとしていますがどうでしょう。
また、日本の風土、空気感と起業との相性はどう感じられますか?

新井)あまり有効な策ではないと思いますね。
シリコンバレーにお膳立てされていってから起業する人は起業家ではないと思いますね。
むしろ、高校生を送ったほうがいいんじゃないでしょうか。

そもそも、日本で起業家は生まれにくいと思います。
起業のリターンは合わないじゃないですか。
例えば早稲田を出て、就職したほうが全然安全で確実な人生を歩めますよね。
(早稲田を出て、)起業家になるなんてリスクリターンが合わないですよ。
中卒で一発逆転するためにリスク採って起業しますというならばわかりますが、いい大学出ていい企業に行ったほうがいい生活が確約されている。
そうした中で、起業には進まないと思いますね。
そういう意味では、昔の起業家は異端児だったとおもいますよ。

中田) そこに私は日本の低成長の理由があると思います。
かつての世界の時価総額ランキング上位の企業は明治維新や第二次世界大戦時のカオスな時代に青春期を過ごした創業者が多かったのではと思います。
カオスな状況が、リスクリターンを度外視した環境へとイノベーターを進めたのではないでしょうか。

政府や起業、金融機関は起業家を増やすモチベーションが高まっているように感じますが、これから日本で起業をしていこうというトレンドは進んでいくと思いますか?

新井)進んでいくとは思いますが、いかんせん牛歩な感じがしますね。
政府関係者は起業したことがあるのですか?と。
マーケティングができる人がマーケティングをするように、起業の専門家が政治をしていかない限り厳しいのではないかと感じます。

中田)私は、新井さんのような起業を起こす可能性のある”異端児”が日本では燻っているのではないかなと思います。
漢文の韓愈には「千里馬」という教えがあるんですね。
長距離を走ることができる優秀な馬は確率的に常に存在するんだけど、それを見抜ける人がいないと農耕馬にされて使い潰されてしまう、と。
そういう人を「伯楽」と言って、「千里の馬」は常にいるけど、「伯楽」は常にはいませんよ、と。
日本も異端児が燻ってしまう伯楽不在の社会なのではないかと思います。
松下政経塾を創った松下幸之助は人には天分があるとしましたが、そうした人の天分を見出す存在が日本に今必要だと私は感じています。

新井)まさにそう思います。
それが私たちNINJAPANAbuild就活のサービスが担えることかなと思っています。
先ほどもお話ししましたように、私は「何者かになりたい」という思いを起業にぶつけることができましたが、一方で、今の日本社会ではそうした思いがありながらも流されて適材適所の場所に行き着かなかったという人も多いのではないかと考えています。
そうした人たちに、違った視点と視座、そしてパワーを得るお手伝いをすることで、活躍できる場へのマッチングが可能になり、社会の幸せを増やすことができると考えています。
天分をまだ見いだせていない人を一人でも多くお手伝いしていけたら幸いです。

中田智博(なかだともひろ)

公益財団法人松下幸之助記念志財団松下政経塾41期生/対話のデザイン研究所クリエイティブ・ディレクター。早稲田大学在学時にスタートアップでプロジェクト・マネージャー、社団法人事務局長COO等を務める。在学中に創設したサークルは1年間で全国テレビに取材される。卒業後、松下政経塾入塾。以来、所定研修や、各級政務秘書/キャンペーンマネジメント業務、地方自治体でのインターンシップ等に従事。2022年より、デザイン・コンサルティング会社対話のデザイン研究所にてクリエイティブ・ディレクターに就任。潜在的イノベーション人材の活躍を通じた日本の成長戦略を研究する。